薬の効果を 高めるには「飲み合わせ」を 意識した方が いいですか?
もくじ
薬の相互作用
複数の薬を使う場合、薬と薬が干渉し合って、時には薬の作用を強めたり、時には弱めたりします。これを薬の相互作用と呼び、患者さんに説明するときには「薬の飲み合わせ」と表現したりします。
薬の相互作用は薬物治療を進めていく上で問題になるケースがあります。本来期待した薬の効果が出なかったり、予想した以上の副作用が出たりする可能性があるからです。
薬同士ばかりでなく、薬と特定の食品の間でも相互作用は起こり得ますから注意が必要です。薬の相互作用には大きく分けて次の2つの機序が存在しています。
①薬物動態学的相互作用
(1)吸収過程:
小腸上皮のCYP(薬物代謝酵素チトクロームP450)、P糖タンパク質の存在、金属イオン、吸着剤など。
(2)分布過程:
血中アルブミンとの結合性、酸性タンパク質との結合性など。
(3)代謝過程:
CYPの阻害・誘導・競合、グルクロン酸転位酵素による抱合反応など。
(4)排泄過程:
尿細管トランスポーター、P糖タンパク質など。
②薬力学的相互作用
(1)作用点が同じ:作用の増強もしくは減弱。
(2)作用点が異なる:作用の増強もしくは減弱。
1)スタチン系薬の制酸剤とイオン交換樹脂との相互作用
スタチン系薬とは、肝臓にあるHMG-CoA還元酵素を阻害してコレステロールの合成を阻害する薬です。
脂質異常症の代表的な高LDL血症の治療薬になりますが、肝臓でコレステロール合成阻害だけでは血中のLDL量を減らすことはできません。
第1章でも紹介しましたが、しつこく説明します。肝臓のコレステロールが少なくなると、血液中で多くのコレステロールを含むLDLと呼ばれるリポタンパク質(世間的には悪玉コレステロール)を肝臓内に取り込むためのLDL受容体を肝臓内でたくさん合成し始め、
血管と接触する肝臓細胞表面にその受容体を集結させて、血液中のLDLを肝臓内に取り込み、肝臓で不足していたコレステロールを補うという工程があります。
これにより血液中の悪玉コレステロールであるLDL量が減少して、結果的に動脈硬化などの人の命に関わる病気を防ぐ役割を果たしてくれます。
現在、スタチン系薬は6種類が販売されていますが、その相互作用で、胃酸を中和してくれる薬(いわゆる制酸剤で、その中でも水酸化アルミニウムと水酸化マグネシウムの配合薬)と同時に服用すると血中濃度が半分になってしまう薬があります。
それはロスバスタチン(先発薬:クレストールⓇ)なのですが、他の5種類のスタチン系薬には併用に関する注意がありません。
その他の相互作用では、スタチン系薬と同様に血液中のコレステロール値を下げる作用のある陰イオン交換樹脂薬と併用すると、3種類のスタチン系薬の作用が弱まるとあります。
6種類のスタチン系薬の構造はよく似ているにもかかわらず、この相互作用のあるなしの違いはどこからくるのでしょうか?
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