第二章 がん細胞との会話

主治医に「髪の毛を抜けさせません!」と宣言

おそらくがん患者が一番苦痛を感じる副作用は、脱毛ではないでしょうか。特に女性にとって「髪は命」ですから、脱毛が与える精神的な打撃は計り知れないものがあります。

そのことについて医師からこんな説明がありました。

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「抗がん剤を打った一週間後には髪の毛が抜け始めて、一カ月後には頭がツルツルになりますけど、今はいい帽子もありますから……」

それを聞いて私はすぐに、

「髪の毛を抜けさせません!」

という言葉を発していました。

「先生、奇跡って何のためにありますか? 私は奇跡を起こしますから」

実際、抗がん剤投与後、一週間、ひと月経っても、私の頭髪に目立った変化はありませんでした。私はホッとして、がんにひたすら感謝の言葉を伝えていました。

ところが二、三カ月くらいしてから、髪の毛がパラパラと三、四十本抜け落ちたのです。私はガッカリして思いました。

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「ああ、やっぱり抜けちゃったか……。先生になんて言おう? “やっぱり抜けちゃいました!” って言うしかないかしら」

病院の理容室でシャンプーをしてもらいながら、理容師さんにそのことを打ち明けると、思わぬ答えを返されました。

「抗がん剤治療中の方がよくいらっしゃいますが、こういう抜け方じゃないです。何しろ髪を洗っていると、皆さんポロン、ポロンとまとまって抜けてしまうんです。村松さんの場合は、ただの秋の抜け毛ですよ」

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それを聞いて私は、本当に奇跡が起きたんだと感じました。

「がんちゃん、ありがとう! あなたやっぱり最高ね~」

「髪の毛を抜けさせない」と医師に宣言するなんて、「なんてバカなこと言う患者がいたもんだ!」と呆れられていたと思います。でも実際私の髪の毛は、まとまって抜けることはありませんでした。がんとの二つ目の約束も守られたのです。

「頭がツルツルになります」と言われて、「ああ、こうなっちゃうんだ。どうしよう」と思うのではなくて、「自分はならない!」と否定して、脳に働きかけて欲しいのです。

そのマイナス要素を撥ねのける力が、がんと対峙する上でとても大切だと思っています。

「自分は脱毛しない!」

と否定。

強く脳に

働きかけた。