人生に明確な目的意識を持つことで、全死亡リスクを低下させられる可能性のあることが、
1万3,000人以上の米国人を8年にわたって追跡した研究から明らかになった。
この傾向は、男性よりも女性でやや強かったものの、性別や人種/民族による有意差は認められなかったという。
米ボストン大学公衆衛生大学院の芝孝一郎氏らが実施したこの研究の詳細は、「Preventive Medicine」11月号に掲載された。
この研究は、50歳超の米国成人を対象にした健康と退職に関する研究(Health and Retirement Study)の
参加者1万3,159人のデータを用いて、目的意識と全死亡リスクとの関連を検討したもの。
目的意識の高さについては、試験開始時(2006〜2008年)に
評価スケールを用いて参加者に自己報告してもらった「人生の目的」に基づき評価した。
また、参加者を研究開始時から8年間追跡して全死亡リスクについて検討した。
その結果、目的意識の最も高い群での全死亡リスクは15.2%であったのに対し、
目的意識の最も低い群での全死亡リスクは36.5%に上ることが明らかになった。
このような目的意識の高さと全死亡リスクの低さとの関連は、
女性の方が男性よりも強かったものの(リスク比は女性で0.66、男性で0.69)、
性別や人種/民族による有意差は認められなかった。
ただし、目的意識の高さの程度にはいくつかの要因が影響していた。
例えば、研究開始時点での経済的な豊かさ、良好な身体的・精神的健康状態、
より若い年齢などの要因に該当する人は、高い目的意識を持っている傾向が認められた。
こうした結果を受けて芝氏は、
「目的意識とは、自分の人生に対する方向性と目標に関する認識の程度で表されるものだ。
この研究では、人種/民族や性別にかかわりなく、目的意識の高い人では
全死亡リスクの低いことが明らかになった」と結論付けている。
一方、目的意識の高さと全死亡リスクの低さとの関連は、
男性よりも女性で強かった点について、
同氏は「さらなる研究で検討が必要」としながらも、
概して女性の方が男性よりも医療機関を受診する傾向が強いことを指摘している。
同氏はまた、「高い目的意識を持つということは、ストレスを軽減し、
炎症に対する防御効果を高めるだけでなく、
自分自身に対するケアの質を高めることにもつながるのだろう」との見方を示している。
今回の研究には関与していない、
米ジョージメイソン大学ウェルビーイング振興センターのJames Maddux氏は、
「これらの結果は全て理にかなっている」とコメント。
同氏は、「明確な目標と計画を持っている人は、
自分にとって意味のあるものを達成するという期待と心づもりを胸に
未来を見ている可能性が高い。
そのような、ゆくゆくは自分の努力の成果を味わいたいという思いがあれば、
身体的な健康や精神的な健康にも気を使うようになる。
また、目的意識を持っていれば、過去のことを悔やんだり、
将来のことを心配して過ごす代わりに、目的の実現に向けて動くものだ」と述べる。
そして、「健康的に長生きしたいのなら、自分にとって重要なことをするのに忙しい毎日を過ごすべきだ」と助言している。