緑内障:薬を使わずに自力で眼圧を下げたい。今後の緑内障が心配 (50代/男性)
ストレスを減らし、副交感神経刺激で眼球内の循環をうながしましょう。
眼球内では、房水(ぼうすい)という液体が産生され循環しています。房水は眼球を内側から圧して、眼球に一定の張りを与えています。この張りを眼圧と呼び、通常は10~21㎜Hgに保たれています。
もくじ
房水は毛様体で作られて、眼球内部を循環しながら
水晶体や角膜に酸素や栄養を運搬し、最終的には房水の排水口にあたる隅角(ぐうかく)から静脈へ排泄されます。房水の排水がうまくいかず眼球にたまると、眼圧が上昇します。
ご心配されている緑内障は、主として眼圧が高くなるために、眼球の奥にある視神経が圧迫されて障害をきたし、視力の低下、視野狭窄(きょうさく)、眼痛、頭痛などが起こる病気です。
排水口の隅角が虹彩(こうさい)によって塞がれ、房水が流れないものを「閉塞隅角緑内障(へいそくぐうかくりょくないしょう」、隅角は開いているものの、排水口のフィルターが目詰まりを起こして房水がたまるものを「開放隅角緑内障(かいほうぐうかくりょくないしょう)」といいます。
実は緑内障全体の6割は、眼圧が正常範囲に
あるにもかかわらず、視神経が障害される「正常眼圧緑内障」です。これも他の緑内障と同様の症状が現れます。
緑内障の予防、治療の主眼は、眼圧を正常に保ち、視神経の障害を防ぐことにあります。現在あなたが使っている点眼薬も、房水の排泄を促して眼圧を下げるものと思われます。ご自身が気づかれておられるように、薬物治療は根治治療とはいえません。
房水がたまるのは、眼球内の循環障害が原因であり、この原因を取り除かない限り、眼圧は正常にならないからです。正常眼圧緑内障の場合も、循環障害であることは変わらないと私は考えています。
眼圧が正常であっても、
眼球に十分な酸素や栄養が届かなければ、視神経に障害が起こるのは当然といえます。
循環障害が生じる原因の1つはストレスによる交感神経の緊張です。働き過ぎや心の悩みなど、なにかしらストレスを抱えていませんか? 夜更かしや睡眠不足も、目には大きなストレスです。これまでのご自身の生活を見直して、思い当たることがあれば改善してください。
利尿剤をやめる
循環障害を招くもう1つの原因に利尿剤があげられます。
ご相談ではわからなかったのですが、あなたは現在、高血圧の治療もしくは腎臓病の治療で、利尿剤を使っていないでしょうか?
利尿剤は、腎臓に作用してナトリウムと水分の排泄を促します。
これによって血液量を減らし、血管の抵抗性を落として血圧を下げるのです。
利尿剤は体から水分を搾り取る作用があるので、体は脱水を起こし血液の粘性が高まり、眼球も含め全身で循環障害が起こります。また腎臓では、血液の濾過や尿の産生ができなくなり、腎不全が起こります。
さらに、血液の粘度が高まると、体は流れにくい血液を流そうとするために、交感神経をより緊張させ脈拍を高めます。こうして交感神経緊張状態が作られていくことで、顆粒球が増え、顆粒球から放出された活性酸素が腎臓を直撃します。高血圧の治療をしていて、人工透析になっている人は少なくないのです。
利尿剤の害は全身におよびます。
眼圧が高い人は、利尿剤をやめることが大切です。実は眼圧を下げる際にも、利尿剤(炭酸脱水酵素阻害薬(たんさんだっすいこうそそがいやく))の点眼薬と、内服薬が使われます。利尿作用は弱いとされていますが、使い続けることで眼球から水分を抜き過ぎてしまう恐れがあり、使用には賛成できません。利尿剤の他に、痛み止めや睡眠薬も、排泄能を低下させるのでやめましょう。
点眼薬で、房水の産生を抑えたり、房水の排出を促すなどして眼圧を下げることはできますが、これは眼球の働きを回復させることにはつながりません。
先に述べたように眼圧のコントロールで大切なことは、
ストレスから逃れて交感神経の緊張を抑えることです。体を温めたり、心地よいと感じられるような軽い運動を行うと、副交感神経が刺激されて排泄能が高まり、房水の排泄も促されます。ほとんどのケースで、2~3カ月で眼圧が正常化し、緑内障が改善しています。「緑内障になったらどうしよう」と心配し続けるのも、精神的なストレスになります。「目にも体にもよいことをいっぱいやっているから、もう大丈夫!」と、明るく開き直りましょう。