もくじ
脂肪肝:中性脂肪は低いのに脂肪肝。健康的な食事をしているのになぜ? (30代/女性)
脂肪肝はストレスから身を守る反応です。
一般に脂肪肝の目安とされるのは、肝臓内の中性脂肪が5%を超えた場合です。
肝臓の重要な働きの一つに、糖質、脂質、タンパク質などの栄養素の代謝があります。
食事に含まれる脂質は腸で吸収されたあと肝臓に送られて中性脂肪に合成され、
一部は肝細胞(肝臓を構成する細胞)の中に蓄えられます。
肝細胞中に脂肪が過剰に蓄えられた状態が脂肪肝です。
原因はアルコールの飲み過ぎや、
脂ものを過剰にとるなど食生活の偏りで起こるとされています。
肝臓に脂肪が溜まったからといって、すぐ生命に危険がおよぶわけではありません。
しかし、放置しておくと肝臓がはれて肝機能に障害が生じ、
疲れやすくなるなどの弊害が生じるようになります。
脂肪肝の治療は食事療法と運動療法が中心で、
効果がないときは補助的に薬物療法も併用します。
あなたのようにアルコールも飲まず肥満もしていないのに、
脂肪肝になる人は少なくありません。
このような非アルコール性脂肪肝の発症原因は不明とされていました。
私たちの体の組織はストレスを受けると、
進化する以前の形に戻る「先祖返り」現象を起こします。
脂肪肝が起こるメカニズムも、この先祖返り現象で説明することができます。
ストレスで先祖返りする肝臓
まず、肝臓の成り立ちからお話ししましょう。
肝臓は腸から進化したものです。腸にふくらみができて肝臓となり、
ここで胆汁を作ったり、脂肪を蓄える役割をになっていました。
貯蔵された脂肪を、肝細胞のミトコンドリアのエネルギー源にしていたのです。
このように肝臓を脂肪の貯蔵庫にしていたのは、
甲殻類やは虫類などの変温動物です。
変温動物は、外界の温度変化に応じて体温を上下させているので、
体を保温するための皮下脂肪を必要とせず、
脂肪は肝臓にためておけばよかったのです。
進化によって恒温動物が現れると、
温度変化に対応するために脂肪を肝臓から皮下と内臓にうつし、
皮下脂肪と内臓脂肪にして保温に使うようになりました。
ところがストレスがかかると、皮下の脂肪を溶かして血液に乗せ、
肝臓に移して溜め込むという先祖返りが起こります。
ストレスに対処するには心身を発奮させなくてならないので、
大量のエネルギーが必要です。脂肪はエネルギーの変換効率がいちばん高いので、
肝臓のミトコンドリアにとっては好都合です。
ストレスが長期化すれば、皮下の脂肪はどんどん血液中に溶かされるので
高脂血症も発症し、肝臓に脂肪が溜まり続けて脂肪肝になるというわけです。