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チェルノブイリ犠牲者は100万人どころではない- 人口激減に直面する日本
ウクライナの人口は、1993年の5217万人から2011年は4566万人と651万人(12.5%)も毎年連続で減少している。べラルーシも1024万人から948万人、76万人(7.5%)減少。そして両国とも総人口だけではなく、新生児数も減少、死亡者数も増加している。
隣国のロシアの人口も調べてみたが同様である。1992年の1億4870万人から2011年の1億4241万人と、629万人(4.2%)も減少している。
これらの人口統計は政府発表であり、実際はさらに深刻かも知れない。とくにウクライナがピークから12.5%減であるのに、汚染がよりひどいベラルーシで7.5%減というのは考えにくい。しかし7.5%でも大変な減少である。
さらに衝撃的なのは、これら三国の近隣諸国でも人口減少が見られることだ。日本と二、三の国を除けば、前年比で人口が減少しているのはチェルノブイリ周辺国だけである。
チェルノブイリから500キロ以上も離れたポーランドやルーマニアでも、1990年代前半のピークから連続して減少している。同じパターンである。
原子力推進派は、経済混乱、貧困化、飲酒、喫煙、肥満、エイズなどが人口減少の原因としているが全く説得力はない。
確かにソ連崩壊後、90年代前半はルーブル切り下げなどで経済は混乱したが、その後、ロシア、べラルーシ、ウクライナともGDPは右上がり傾向にある。経済混乱の度合いは、むしろギリシャやスペインのほうが深刻だが、人口は減少していない。
もちろん飲酒、喫煙、肥満、エイズ等も90年以降の急減の理由にはならない。これほどの人口急減を説明できるのは、唯一つ、チェルノブイリの放射能汚染しかない。
事故があった1986年から5年後ぐらいから被曝被害が顕著になり、7年後あたりから亡くなる人が急増する。各国ともその通りに人口が推移しているのだ。
この20年弱で上記三国だけでも1300万人以上減少している。その他の国を含めたらいったいどのぐらいの数になるのか想像もできない。
チェルノブイリ事故で100万人が犠牲になったと言われているが、これはごくごく控えめの数字だと言える。実際は何倍も死んでいるだろう。
そして死亡者の何倍もの人が今も被曝障害に苦しんでいるのだ。蝶々のような形の汚染地図がよく取り上げられるが、あれはクセモノである。
着色した地域以外はまるで汚染がないかのように思ってしまうが、汚染はポーランドやルーマニアを含めた広大な地域に広がっており、今も多くの住民の健康を蝕んでいるのだ。
さて日本の場合はどうか。
日本は人口も多く、人口密度もはるかに高い。チェルノブイリではわずか数ヶ月で石棺を完成させ汚染拡大を防いだが、福島原発は未だに手つかず、ダダ漏れ状態だ。
一説には溶融燃料は地下深く降下しており、もはや回収不可能だとも言われている。
すでに首都圏でも、チェルノブイリ強制避難区域なみの汚染があちこちで見つかっている。家庭の掃除機のチリから何万ベクレル/kgもの汚染が当たり前のように検出されている。
チェルノブイリより被害ははるかに少ないと思いたいが、その理由は全く見つからない。
日本では、今後50年で団塊および団塊ジュニアが寿命となり人口は3分の2になると言われている。それに被曝による人口急減が加わったらどうなるか。恐ろしくて想像したくないが、これが日本を待ち受けている運命である。
ウクライナ、ベラルーシでは10年ほど前から、汚染食品を厳しく制限することで、やっと人口減少に歯止めがかかってきたという。
日本政府、自治体は食品汚染の基準値をやや厳しくしただけで、決して測定を積極的に行なおうとしない。危険なことはわかっているのに見て見ぬふりである。
チェルノブイリの汚染被害に詳しいユーリ・バンダジェフスキー博士の言葉が重く響く。 「このまま情報を隠し続ければ、数十年後に、日本人という国民が本当にわずかになってしまうでしょう」