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冬季の風邪の流行の原因は?
冬になると風邪をひきやすくなるのはなぜなのか。その答えはどうやら鼻にあるようだ。
米Massachusetts Eye and Ear InfirmaryのBenjamin S. Bleier氏らが実施した研究で、鼻の中に侵入した上気道感染症の原因ウイルスは鼻の中で起こる免疫反応により除去されるものの、この免疫による防御作用は気温が下がると弱まることが明らかになった。
この研究結果の詳細は、「The Journal of Allergy and Clinical Immunology」に12月6日掲載された。
ウイルスや細菌は、主に鼻から人体に侵入する。このような病原体と最初に闘うのが鼻だ。
2018年にBleier氏らが実施した研究では、鼻の内側(鼻腔)の細胞が侵入した細菌を検知すると、これに対処するために、液体で満たされた何十億もの小さな袋状の細胞外小胞(EV)と呼ばれる物質を鼻粘液に放出して細菌を取り囲み、攻撃することが明らかにされた。
この研究ではさらに、EVは気道全体に抗菌ペプチドを行きわたらせて細胞を守り、侵入した細菌が気道全体に広がるのを防ぐ働きをすることも示された。
今回の研究では、鼻から侵入したウイルスに対しても、この免疫反応が惹起されるのかどうかが検討された。
Bleier氏らは、手術を予定されている患者と健康なボランティアから採取した鼻腔の細胞と組織を、
3種類の一般的な風邪の原因ウイルス(コロナウイルス1種類、ライノウイルス2種類)に曝し、その免疫反応を調べた。
その結果、3種類のウイルスはそれぞれ、細菌に対する場合とは異なるシグナル伝達経路を介して、鼻腔細胞からのEV分泌を誘発することが明らかになった。
また、放出されたEVには、気道の細胞ではなく自らにウイルスを結合させるための受容体が備わっており、さながらウイルスをひきつけるためのおとりとして機能していることも分かった。
論文の筆頭著者である、Massachusetts Eye and Ear InfirmaryのDi Huang氏はこの点について、「おとりが多ければ多いほど、鼻腔の細胞に結合する前に排除できるウイルスの数も増え、感染も抑制できる」と説明している。
次に研究グループは、気温の低下がこの免疫反応に及ぼす影響について調べた。
そのために、まず健康なボランティアを室温約23℃の室内から連れ出し、4.4℃の室外で15分間過ごさせた。
その結果、被験者の鼻腔内の温度は約5度低下した。この温度の低下を鼻腔組織に適用して免疫反応の変化を確かめたところ、EVの放出率は42%近く低下し、EVの抗ウイルス効果も低下することが確認された。
Bleier氏は、「これまでは、寒い時期に風邪やインフルエンザがはやるのは、寒くなると人々がウイルスの伝播しやすい室内で過ごす時間が増えるためだと考えられていた。
これに対してわれわれの研究は、毎年のように見られる、風邪やインフルエンザの罹患率の季節による変動の生物学的な根本原因を示唆するものだ」と話す。
研究グループは、今後は、あらゆる種類の病原体に対する鼻の中での免疫反応について詳細に調べたいとの考えを示している。
また、このような免疫反応を誘発して強化する新薬の開発も視野に入れているという。(HealthDay News 2022年12月6日)
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